IT求人79万人不足の事実
放課後の教室で、ヒロキはノートパソコンの画面をじっと見ていた。
隣の席では、誰かのキーボードを叩く音が、雨みたいに軽やかに響いている。
自分の指は、まだその速さに追いついていない。
それでも先に結論だけ言ってしまうと、タイピングが遅いことは、ITに向いていない理由には、ならない。
むしろ今のITプログラミングの世界は、最初から速い人より、ゆっくりでも続けられる人を必要としている。
その理由を、ヒロキと一緒に、ひとつずつたどっていきたい。

なぜ「ITは強い」と言われるのか 数字で見る将来性
2030年に79万人不足するIT人材のリアル
経済産業省の調査によると、IT人材の不足は今後も拡大していくと見られている。
現状ですでに人材は足りておらず、2030年には最大で79万人規模の不足になるという試算もある。
数字だけ聞くと実感が湧きにくいけれど、これは「これから先、IT人材は探しても見つからない時代になる」という意味に近い。
つまり、今から始める人にとっては、ライバルが少ないまま入っていける場所が、まだ残っているということだ。
求人倍率6〜10倍、引く手あまたの今
求人の世界には「倍率」という数字がある。
これは「ひとりの転職希望者に対して、何件の求人があるか」を示す数字で、倍率が高いほど、企業同士が人を取り合っている状態を意味する。
調査によって対象や時期が異なるため、ここでは2つの調査を並べて見てみる。
| 調査 | IT分野の倍率 | 全体の平均倍率 |
|---|---|---|
| doda転職求人倍率レポート(2026年1月) | 6.70倍(IT・通信分野) | 2.57倍(全職種平均) |
| レバテック調査(2025年12月) | 10.4倍(IT人材の転職求人倍率) | 1.18倍(全業種平均) |
どちらの調査でも、IT分野の倍率は全体平均の2倍以上になっている。
調査ごとに数字の出し方は違っても、「IT人材が他分野よりも強く求められている」という方向性は共通している。
年収1,000万円プレイヤーも夢じゃない伸びしろ
ここで終わらせず、もう少し踏み込みたい。
プログラマーの平均年収は、調査によって差はあるが、おおむね420万円から460万円台とされている。
これは日本の平均的な給与水準と比べても、決して低くはない数字だ。
さらに注目したいのは「平均」の先にある世界だ。
IT人材全体で見ると、年収1,000万円を超える人の割合は約7.9パーセントというデータもある。
これはプログラマーだけに限った数字ではなく、ITに関わる仕事全体の中での割合だが、それでも特別な天才だけの数字ではない。
スキルを積み重ねた先に、誰でも届く可能性がある範囲として示されている。
ヒロキは、その数字を見て、少しだけ目を見開いた。
「タイピングが速い人」の話ではなく、「続けた人」の話だと、はじめて気づいたからだ。
タイピングが遅い・文系でも本当に大丈夫か よくある誤解
「プログラミング=難しい」は思い込みにすぎない
プログラミングが難しく見える一番の理由は、知らない言葉が多いからだ。
英語の授業で、知らない単語ばかりの文章を読まされたら、誰でも難しく感じる。
でも、ひとつずつ意味を覚えていけば、文章は急に読めるようになる。
プログラミングも同じ構造をしている。
最初に難しく見えるのは、能力の差ではなく、知っている言葉の数の差にすぎない。
全員がコードを書いているわけではない仕事の分業
もうひとつ、よくある誤解がある。
それは「IT業界の人は、みんな毎日コードを書いている」という思い込みだ。
これは、レストランの厨房を想像するとわかりやすい。
- 料理を考える人(設計を考える役割)
- 味を確認する人(出来上がりを確認する役割)
- お店を回す人(できたものを運用していく役割)
レストランの中にも、こうした役割分担があるように、IT業界の中にも、いくつもの持ち場が存在している。
コードを書く作業は、その中のひとつの工程にすぎない。
タイピングが多少ゆっくりでも、活躍できる持ち場は、ひとつではない。
向いているのは才能より「続ける力」
ヒロキの隣の席の生徒は、たしかにタイピングが速い。
でも、それは生まれつきの才能ではなく、これまでに触れてきた時間の差にすぎない。
向いている人の共通点としてよく挙げられるのは、得意かどうかよりも「分からないことを放置しない」という姿勢だ。
速さは後から追いつける。
続ける力だけは、今日からでも始められる。

世界の偉人・国家戦略に学ぶ「IT×逆転」のリアル
世界初のプログラマーは19世紀の女性だった
ITは、男性的で、理系の人だけのものだと思われがちだ。
けれど、世界で最初にプログラムという考え方を残したのは、19世紀のイギリスの女性だったと言われている。
コンピューターという機械がまだ存在しない時代に、計算の手順を言葉で書き残した人物だ。
性別も、得意科目も、最初から決められた条件ではなかった。
その事実だけで、ヒロキの肩から少し力が抜けた。
ゲーム好きの青年が社長になった日本の実例
日本にも、似たような道をたどった人がいる。
ある人物は、もともとゲームが好きで、自分でプログラムを書いて遊んでいたという。
その経験を積み重ねた結果、後に大きなゲーム会社のトップに立つまでになった。
特別な家庭環境や、特別な才能から始まった話ではない。
ただ「好きなものを、自分の手で動かしてみた」という、小さな一歩からの話だ。
国家を挙げてIT人材を育てる国々の戦略
これは個人の話だけではない。
国というスケールでも、同じことが起きている。
人口の少ない国が、行政手続きのほとんどをオンライン化し、世界から注目される電子国家になった例がある。
また、国全体でIT教育に力を入れ、世界中の企業にエンジニアを送り出している国もある。
ひとりの選択が、社会全体の力になっていく。
そのスケールの大きさを知ると、自分の小さな一歩も、決して小さくは見えなくなる。
AIの時代でもITプログラミングが「なくならない」理由
AIに仕事を奪われる説と現場のリアルな声
最近よく聞くのが「AIがコードを書く時代に、人間が学ぶ意味はあるのか」という声だ。
たしかにAIは、コードの一部を作れるようになってきている。
ただ、それを使いこなし、正しく組み立て、目的に合わせて指示を出す役割は、依然として人間が担っている。
道具が増えても、その道具を使う人が必要なくなったわけではない。
景気や時代に左右されにくい「手に職」の強さ
ITは、特定の業界だけで使われている技術ではない。
たとえば、次のような業界でも、ITの仕組みが裏側を支えている。
- 医療(電子カルテや予約システムなど)
- 飲食(注文システムや予約アプリなど)
- スポーツ(記録分析やチケット管理など)
このように業界をまたいで必要とされているからこそ、ひとつの業界が不調でも、IT全体への需要がなくなることは考えにくい。
時代の変化に強い分野として、今もなお注目され続けている理由は、ここにある。
場所にしばられず働ける将来の選択肢
ITスキルのもうひとつの特徴は、働く場所を選びにくい点だ。
会社に通うことだけが、働き方のすべてではなくなりつつある。
自宅から仕事に関わる人も増えてきている。
将来、進学先や就職先で迷ったとき、選択肢が多いことは、それだけで安心材料になる。
ひとつの道に縛られない自由さも、ITが持つ強さのひとつだ。
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今日からできる、ITプログラミングへの一歩
スマホ1台・無料ツールで始められる体験
ここまで読んで、少しでも気持ちが動いたなら、最初の一歩は驚くほど小さくていい。
パソコンを持っていなくても、スマホひとつで触れられる学習環境は、今はたくさん用意されている。
たとえば、ゲーム感覚でプログラミングの基礎に触れられる無料アプリや、動画を見ながら手を動かして覚えられる無料サービスなどがあり、お金をかけずに始められる方法もある。
いきなり本気にならなくていい。
「ちょっと触ってみる」だけで、十分なスタートになる。
専門学校で学ぶという選択肢のリアル
もし、もう少し体系的に学びたいと感じたら、専門学校という道もある。
大阪ITプログラミング&会計専門学校天王寺校では、大学とは異なる学び方で、実際に手を動かしながら技術を身につけていくスタイルを中心にしている。
授業も学校も、それぞれに良さがある。
大切なのは、自分に合った学び方を選ぶことだ。
オープンキャンパスなどで、実際の授業の空気に触れてみるだけでも、見える景色は変わってくる。
「できた」を1回作ることが自信になる
最後に、ヒロキの話に戻りたい。
タイピングの速さは、まだ追いついていない。
それでも、簡単な操作をひとつ覚えただけで、思っていたより悔しさより先に、小さな面白さがあったことに気づいた。
向いているかどうかは、最初の1回ではわからない。
ただ「できた」という瞬間を、1回だけでも自分の手で作ってみること。
その積み重ねの先に、誰も予想していなかった未来が、静かに待っている。
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